研究内容

固体酸化物形燃料電池の電極製造プロセスシミュレーション

高性能な固体酸化物形燃料電池(SOFC)の電極を設計するためには,多孔質状の電極が製造される複雑なプロセスを解明し,さらにそのプロセスをうまく制御することが鍵となります.しかしながら現状では,実験的な試行錯誤を繰り返すことによって電極が設計されています.そこで,離散要素法・キネティックモンテカルロ法といった数値シミュレーション方法を組み合わせ,原料粉末特性(例えば充填率・粒径分布・粒形状など)を初期入力とし,粉末の焼結特性から発電特性までを一気通貫で評価することができる電極製造プロセスシミュレーターを開発しました.本研究は,他大学と連携を図りながら進めており,実験検証や機械学習モデルとも組み合わせることでより高度な設計技術へと発展させています.

図1:電極製造プロセスシミュレーション概要

積層セラミックスの一体焼結プロセスのその場観察

積層セラミックスの製造では,テープ成形法などで作製されたグリーンシートを積層し,高温で一体焼結させる高度な技術が求められます.この時,材料間の収縮速度や熱膨張係数に大きな違いがあると,積層体内部に応力が発生し,積層体のそり変形や剥離破壊が生じてしまいます.本研究では,長作動光学顕微鏡による非接触式の観察装置を用いて,一体焼結体のマクロな形状変化をリアルタイムでモニタリングし,積層体のそり変形や破壊を抑制することに取り組んでいます.

図2: 高温炉内の一体焼結体のそり変形の様子

多孔質材料の微細構造の三次元再構築化

高温焼結プロセスで得られる多孔質材料の機械的・電気的特性は,メゾスケールでの多孔質構造と強く関係します.そこで,集束イオンビーム-走査型電子顕微鏡複合装置(FIB-SEM)を用いて,多孔質材料の微細構造を三次元再構築し,その構造の特徴を精密に把握することを行っています.本研究室ではこのトモグラフィー技術を,固体酸化物形燃料電池の製造プロセスの解明,セラミックス焼結現象の解明,イメージベース有限要素法による強度特性評価,数値シミュレーションの妥当性検証などに活用しています.

図3: FIB-SEMを用いた多孔質材料の三次元再構築像

固体材料中のナノ欠陥挙動解明

材料の物理的特性や機械的特性を明らかにするためには,しばしば材料に内在しているナノスケールの欠陥挙動を理解することが不可欠となります.しかしながら一方で,小さなスケールの材料欠陥の運動を実験的に高精度に捉えることは多大なコストと労力を要するのが現状です.そこで,分子動力学法を代表とする分子計算を活用し,計算機上でミクロな欠陥の動的な振る舞いを提示する基礎技術を開発しています.これらの技術を例えば,電解質材料内の原子空孔拡散特性予測,耐熱合金材料中の転位挙動の把握,界面剥離プロセスの理解などに適用しています.

図4: 分子計算によるミクロ欠陥挙動解析

有限要素法による有人ロケット緊急離脱時の乗員安全性評価

有人宇宙飛行における打ち上げアボードシステムは,クルー安全性を高める技術の一つですが,緊急着水時には大きな衝撃が負荷されるため,その際の人命喪失確率や傷害発生確率を定量的に評価することが強く求められています.そこで,人体ダミーモデルを用いた動的な有限要素法解析を行い,想定される着水時の衝撃が人体に及ぼす影響を評価しています.本研究も他機関と連携を図りながら進めているテーマです.

図5: 有限要素法による人体傷害解析モデル

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